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しまねこしねま

おばあちゃんの短歌

祖母


●私の祖母です。

明治、宮司の娘に生まれ、女学校を出た祖母は短歌を愛し、幼なじみである禅宗の僧侶である祖父のもとに嫁ぎました。祖父を深く愛していた祖母は、祖父が急死したときに長い長い長恨歌をつくり、結婚で中断していた短歌づくりを再開しました。



●歌集「花筐」(はながたみ)/S41より

世のすべてここに終るやさりげなく破顔一笑息たえたまふ

大き息いま絶えたまふ朝にして冴え返るなり鶯鳴くも

今ぞ死なす君がかがとに垢ぎれのあな痛々し五分ほど血吹ける

冴えかへり心も凍るあかつきに君死にたまひ時すぎむとす

白き綿口に塞ぎて眠らすは数時間まへ語りし夫(つま)なる

思ひ出といふ言の葉のそらぞらしわが胸いつぱいに君は生けるに

わが家に君亡きことのみ変りはてて返らぬ日数とほく流れき

わがなやみ雨は知れるや夜な夜なに降れればいとどなぐさむものを

亡ききみに書きしたよりに宛名せず枕にしきて眠る旅の夜

うれしといふ言の葉ふたつわれにあり今宵の夢ときみ思ふこと

手をとればさつと消にけり人の世を忘れしきみかかなしまなざし

起きいでてまづうれしきは花ぞのに葉もみなぬれていとし花ばな

木瓜さくら連翹(れんぎょう)すみれみな咲きて君に見せたき庭のおもむき






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